加藤周一

細部は全体から独立してそれ自身の形態と機能を主張する。それが非相称的美学の背景にある世界観であろう。その世界観を時間の軸に沿ってもれば「今」の強調であり、空間の面からみれば「ここ」、すなわち眼前の、私が今居る場所への集中である。時間および空間の全体を意識し、構造化しようとする立場に立てば、相称的美学が成り立つ。相称性は全体の形態の一つだからである。時空間の「今=ここ」主義を前提とすれば、それ自身として完結した部分の洗練へ向うだろう。